環境鮮麗学

環境鮮麗学 第5回「未来に向かって舵をとれ!」

 広島サミットが開催される中、環境鮮麗学の授業ではバトルが勃発!生徒たちは国のリーダーに扮し、気候変動がもたらす攪乱(かくらん)から自国と国際社会を守るため、難しい対話に挑みました! 果たして世界は存続できたのでしょうか?

 

 SDGs達成が声高に叫ばれる私たちの世界。17のゴールを掲げなければならない社会になってしまったのはなぜなのでしょうか。今日は世界共通の脅威「気候変動」を題材に、次世代を担う若者たちが、仮想世界の存続をかけて地球規模課題に挑みました。
 もちろん、本当にバトルするわけにはいかないので、ボードゲームに没入して頂きます。生徒たちは資源や技術レベル、そして経済力の異なる4つの国に分かれ、国のリーダーとして、自国民を守るために予算を使って攪乱に対処します。適切な予算配分を行うことができれば、攪乱(かくらん)によるダメージを最小限に抑えることができます。国際情勢ボードで他国の状態も気にしながら、熱波や台風を乗り切るリーダーたち。地球規模の攪乱(かくらん)を前に、たびたび国際協力を行う必要性に迫られますが、悲しいことに国家予算は限られています。自国民を救うための予算を他国を助けるために使うべきか否か、国内(グループ内)でも国家間でも摩擦が生じ始めます。「お前の国も金出せよなー」「我が国には条約に参加する経済的余裕はありません・・・」などなど、話し合いは難航しますが、もちろん災害は待ってくれません。次第に減っていく人口と予算。どこからともなく「もう戦争しかないな」という声が。このゲームでは何でもアリなので、戦争という選択も可能です。しかし生徒たち、いえ、国のリーダーたちは対話を続けることを選びました。ここだけの話、ちょっと感動してしまったのが難民支援の場面。海面上昇で発生した環境難民を救うために、自分たちも結構ヤバい状況にある国が支援を申し出たのです。そんな中、無情にも国際情勢はさらに悪化の一途をたどり・・。
 残念ながら、今回のゲームでは、世界は滅びました。このゲームは、生徒に「あなたの問題はわたしの問題」という視点に気付いてもらうためのものでしたが、難民の救援に尽力する姿を見て、現実社会がこのクラスのようになれば、まだ未来に希望はあるなと感じました。私たちが発展することに集中しすぎて忘れかけていたこと、そしてSDGs達成のために私たちがするべきこと。「となりの人を、ちゃんと見る、ちゃんと知る」。そのハードルは見事にクリア

環境鮮麗学 第4回「世界がヤバいと思うこと」

第4話からはSDGs編!つながりの大切さを学んだ生徒たちが地球規模課題を考えるミッションに挑戦!今日の切り口は「飢餓」。始動早々、未来の食事で大ピンチ!?

 

 いよいよSDGs編がスタート!今回は飢餓という視点で世界を見渡し、バランスを崩しているところはどこか、循環がとぎれているのはどこか、を考えました。
 まず注目したのは、なぜ飢餓に陥るか、という点。食糧が慢性的に不足している国を確認し、どんな場所で、どんな条件が重なると飢餓が広がるのかを考えました。衝撃的だったのは食糧の行方を考えるパート。地球全体ではみんなが食べられる量の穀物を生産できているのに、途上国に食糧が行き渡らないのはなぜか? どこで、誰が、どんな形で穀物を食べているのか?トウモロコシと牛肉のデータを見ながらみんなで考えました。大量の穀物が牛肉に姿を変え、経済力の大きい国の食卓に現れる。その現実は、遠くの国の飢餓と私たちの食生活が無縁ではないことを示しています。その他に「買えないと食べ物がない」「つくっている国の自然環境を壊さないことも買う側の責任」など、食糧を輸入に頼る日本の現状から生徒たちは多くを学んだようです。
 食糧を買う側の先進国も決して飢餓フリーではありません。ハンガーマップLIVEは、気候変動や紛争、病害虫や感染症の被害によって、お金を持っていても食糧が手に入らない!、そんな未来があり得ることを教えてくれます。卵。肥料。そして家畜のえさ。北海道で手に入りづらくなっているものに注目すると、世界のどこで飢餓が発生してもおかしくないことを思い知らされ、ぞっとします。
 食卓に到るまでの食糧事情を知ると、食品ロスがどれだけ恐ろしいことか実感がわいてきます。何もしないとどんな未来がやってくるのでしょうか。それを体験するために最後は未来の食糧の"試食″にトライしました。メニューは「代替肉」「コオロギ」そして「クラゲ」。いずれも10年後の食卓を支えているかもしれないものばかり。「昆虫、意外と食べれた!」「絶対イヤ!」。。。皆さん、食生活を守る大切さを痛感されたご様子。中には「飢餓についてもっと知りたくなった」という声も。世界がヤバいと思うことを知り、“自分がヤバいと思うこと”に気づいたようですね。

※ハンガーマップLIVE(URL;https://ja.wfp.org/publications/hankamatsufu-0)

環境鮮麗学 第3回「なぜグループ活動ばかりさせるの?」

第3回のテーマは対話。自分と相手の「当たり前」が違うことに気づいた生徒たちが「伝える」会話を「伝わる」対話にするために試行錯誤します。

 

ちょっと心配だった連休明け。全員が元気に登校し、休み時間を楽しく過ごす姿にひと安心です。  さて第3回のテーマは「脳」と「対話」。さっそくグループで連想ゲームに挑戦し、ある一つの事柄から連想する言葉が人によって全然違うことに驚き、相手の話に耳を傾けないと互いの思いや考えを伝えるのは難しい、ということを実感しました。また、異なる経験をしてきた一人ひとりの脳が考え出すアイデア、そのすべてが重要なヒントになることを再認識しました。
 対話のパートでは、「その人の行動は社会にどんな影響を与えたと思うか」というお題で生徒どうしが意見交換に挑戦。生徒たちが選んだ人物は、アンネ・フランク、大谷翔平、カリコ・カタリン、J.K.ローリング、杉原千畝、田中正造、ベートーベン(敬称略)など実に多彩。"事実″と"自分の意見″をしっかりと整理して、各チームとも1分間の人物紹介を見事にやりとげました。
 ところで、今回の授業では、ChatGPT(仮にチャッピーくんと表記)にも参加してもらいました。大谷翔平の二刀流は社会にどんな影響を与えたと思うか?という質問をしてみたところ、チャッピーくんはネット上で語られている大谷選手の評価を理路整然と記述しただけでしたが、大谷翔平チームは「MLBのルールが変わった」点にフォーカスして発表していました。人工知能を道具として使いこなしながら、自分の意見を大切にする。その大切さを生徒たちが気づいてくれたら嬉しい限りです。いずれにせよ、情報があふれかえる社会で、人工知能と人間の脳、それぞれの長所を使い分けながら、探究を深めていってほしいです。
 え? なぜ環境の授業で脳や対話を扱うのか、ですって? もっともなご意見です。これから生徒たちが向き合う環境問題の多くは、ほとんどが立場の違う人間どうしのぶつかり合いだからです。相手の立場を完全に理解するのは難しいかもしれませんが、想像力でそれを補える人が増えれば、その人たちの脳が大きな問題を解決する第一歩を生み出すかもしれませんからね。まずは、生徒たちが教室の環境をどうつくりあげていくか、すみっこから見ていようと思います。

学校設科目「環境鮮麗(せんれい)学」第2回

環境鮮麗学 第2回「そこにあるルール」
 クラス全員でつくっていく「環境鮮麗学」の授業。第2回のテーマは「ルール」。空間を支配している自然のルールに関心を向け、“不自然な状態”、に気づく力を養いました。はじめに注目したルールは「重たいものは沈む」。生徒たちは空気や二酸化炭素分子の質量を計算し、動きを予測してから、ドライアイス上で落下しないシャボン玉を観察しました。さらに、このルールを通して、不安定な大気、プレートの沈み込み、海洋深層水の大循環、などの現象に目を向けました。
 次に目を向けたのは「生き物はいつか死ぬ」というルール。生徒たちは周波数の異なる音を聞き、自分たちと20代の教員には聞こえる12000ヘルツの音が、50代の教員にはまったく聞こえないことに驚愕していました。また、「生き物はいつか死ぬ」というルールの裏側にある「ある生物の死がほかの生物の生存を支える」という点については、ゆっくりと気づいてもらうために、今日は軽く触れるだけにしました。
 厳しさを増す地球環境の中で、若者たちは否応なく「地球に負荷をかけないシステムづくり」を求められます。成人し、持続的でないしくみを見つけ出した彼ら、彼女らが「こんなふうにしたらどうでしょうか」と声を上げる日を、私たちは楽しみにしています。

学校設定科目「環境鮮麗(せんれい)学」第1回

 環境鮮麗学第1回「環境って何だろう」                            4月12日(水)白糠の特性を活かした学校設定科目「環境鮮麗学」が開幕しました。生徒と先生が試行錯誤をともにしながら作り上げていく「教科書のない授業」のはじまりです。ゴールは、地球環境や社会と自分の”つながり”を認識し、意志や行動を決められる人間になること。1学年では、まず自分の切り口で周囲の世界を捉える練習から。第1回では「つながり」に目を向けること、見えていないものにも関心を向けること、そして、自分自身も環境の一部であること、を学びました。目の前の超電導現象やウランに戸惑いながらも、生徒たちは磁力線や放射線の存在をしっかり感じ取っていました。しかし、今日の授業で生徒たちの印象に強く残ったのは「つながりや循環がバランスを失うと、環境問題が発生する」という点だったようです。生徒たちが、白糠を通して社会や地球環境をどのように捉え、何を選択するのか、これからの展開が楽しみです。